buyer's room 2020 経済産業大臣賞受賞 NorteCarta「いぶりがっことチーズのオイル漬」
「プロのバイヤーさんから、ダイレクトな視点で商品を評価してもらえたのがよかった。」「アイデアが浮かぶのは素人の強み。でも足りない経験と実績を補うには、buyer's room の受賞が一番効果的だった。」オイル漬け専門店 Norte Carta 代表 岡本 大介さんのインタビュー
「プロのバイヤーさんから、ダイレクトな視点で商品を評価してもらえたのがよかった。」「アイデアが浮かぶのは素人の強み。でも足りない経験と実績を補うには、buyer's room の受賞が一番効果的だった。」オイル漬け専門店 Norte Carta 代表 岡本 大介さんのインタビュー
「バイヤーさんが本気で選んでいるということにつきる。」…岡本さんに「buyer’s room」の魅力を問うと、即答でこう返ってきた。buyer’s room は、実際の販売を前提にしている。受賞するということは即ち商談の始まりでもある。どのバイヤーが自社の商品を選んだのかも公表される。他の審査会とはその点で大きく違う。
実際の取引の中でフィードバックがある。それがまた、次のアイデアや商品開発に繋がっていく。それが buyer’s room の魅力だ。「バイヤーというプロフェッショナルの人たちの視線を通して、実はこの商品ってこういうお客さまにも合うんじゃないかとか、あるいは、ここをこういうふうにブラッシュアップすると、もっとこんなふうになるんじゃないかなど。自分ではなかなか気づかないところを、教えてもらえる。そこに大きな価値がある。」そう岡本さんは話してくれた。
「立ち上げたばかりのブランドの、足りない経験と実績を補うには、buyer’s room の受賞が一番効果的だった。」と、岡本さんは続ける。いくらアイデアがあっても、いい商品が作れたとしても、この受賞がなければ、周りへの「説得力」が足りなかった。まだ関係が浅い取引先が多かったので、受賞をきっかけに信頼関係が強まった。原材料に関しても、難しいリクエストにも、気持ちよく応じていただけるケースが増えた。これは、「buyer’s room での受賞を糧にして、さらなる信用を築くことができたから。」と、岡本さんは重ねた。
「応募したのは、創業間もない僕らに足りない経験と実績を補うなら、コンテストでの受賞が一番効果的だと思ったからです。毎年、コンテストがあるのは知っていた。こちらから商工会に問い合わせました。売れるか売れないかという、よりダイレクトな視点のbuyer’s roomで最高賞をいただけたのは本当にうれしかった。大きな「説得力」になりました。」
Norte Cartaは、2018年に岡本さんが立ち上げた。店名はスペイン語で「北の手紙」「北のメニュー」。秋田という北の地域から、美味しい商品を皆さまの食卓に、手紙のように届けたいという思いがあった。そして秋田県を通る北緯40度と同じ緯度にスペインがある。さまざまなイマジネーションを受けて、岡本さんたちは、スペインのオイル漬けをヒントに次々と商品を生んできた。
いま「buyer’s room」での受賞を、きっかけに商品は、県外に広がりはじめた。11月受賞。受賞から時間を置かずして地元のテレビ局で取り上げられたり、人気のWEBマガジンで掲載。その後、在京のテレビ番組で取り上げられる。今は、秋田県の範疇を飛び出して全国へ。売上の大半が県外を占めるようになった。今風に言うと「バズった」。全てが「buyer’s room」が理由というわけではないが、「経済産業大臣賞受賞」という賞のパワーを感じたと言う。このパワーの後押しと、SNS、雑誌、テレビなど様々な相乗効果があって、多くの方に認知してもらえることとなった。
商品名のとおり、一番大事なのは「いぶりがっこ」。岡本さんが惚れ込んだ秋田県南部の本場「湯沢地域」の生産者から供給を受ける。それに加えて、発酵文化の象徴でもある「塩麹」。そして、ポイントは、味付けとしてだけでなく、魅力的な色を演出する秋田伝統の魚醤「しょつつる」。このすべてが、「いぶりがっことチーズのオイル漬」で繋がった。
賞品ヒットの理由を、岡本さんは、こう分析する。「仕掛け作りだったりとかアイデアの種みたいなものは生み出せる。だが、それを実際の商品にしていく。あるいは、お客さまにどう伝えていくかは、お客様に近い感性を持つ菅原さんの方が向いている。私一人では、絶対に商品化までたどりつけなかった。彼女がいて初めて形にすることができた。」
商品開発の菅原美里さんは、伝統の秋田の食材に対して、自由なアプローチを提案した。お土産物で売られている1本まるのままのいぶりがっこや、薄切りになったものではなく、「今までにない角切りのいぶりがっこ。歯応えも良くて、見た目も中身がきれい。美味しそうだなと思ってもらえるようなモノ」「オイルも透明感のある仕上がり」「たとえて言うなら”食べるハーバリウム”のようなイメージ」を目指したと話す。
「僕らは、基本的に最後の最後に商品を作っているだけ。元々ある秋田の大切な食材を作っている彼らがあって、こそ」「ぜんぶ自分たちでやっているとは思っていない。ただ、そういう関係性に、ひたすら感謝している。」「まだまだ恩返しはできていない。頑張らないと。」岡本さんは、そう話す。聞けば聞くほど、まるで瓶の中身は、秋田の食の結晶と、それを支える人々の繋がりの標本のように見えてくる。
これから、岡本さんたちは、春に出す予定の商品開発に着手する。この半年、「buyer’s room」や、さまざまな評価を受けてきた。「正直、目の前の受注をどうこなすかで手一杯だった。」と語る。「いぶりがっこ」と「チーズ」がいつまでお客様に評価していただけるか、それは誰にもわからない。供給先の評価や、お客様からの評判に、1つ1つの自信を積み重ねてきた現在だからこそ、改めて供給体制を構築し、より良い商品を製造できるように整えていきたい。そう岡本さんは語る。
「販路が開拓できて 実際に売り上げにつながるというだけが大事じゃなくて、そういうコミュニケーションの中で、新しい商品の世界を広げていけるのは、とても大事。」
(文=吉川真那 撮影=木村文吾)
岡本 大介(オイル漬け専門店 Norte Carta 代表)
buyer’s room とは
昭和63年に開始した本事業は、「審査会型ビジネスマッチング」をテーマに、賞の授与による付加価値向上に加え、流通業者とのビジネスマッチングの機会を提供しています。
buyer’s one とは
第一線で活躍するバイヤーたちによる商品開発・改良時点から、マーケットの需要を踏まえた「売れる商品作り」までをサポートする取り組み。商品開発・改良支援を行い、その後の販路開拓まで一気通貫で支援する「buyer's one(バイヤーズ・ワン)」。